
中国OEMの金型費用と所有権|型代を払う前に決めておきたいこと
中国OEMで金型を作るときの費用の考え方と所有権の注意点を解説します。型代の支払い方、所有権・保管・返却を契約で決める項目、金型代が輸入時の課税価格に加算される…
仕様・品質・納期・知財・紛争解決を契約で決め、中国OEMのトラブルを防ぐ
中国の工場にOEMで商品を作ってもらうとき、見積もりやサンプルのやり取りに時間をかける一方で、契約書は工場が用意した簡単な書式や、チャットでの合意だけで済ませてしまうケースが少なくありません。しかし、量産に入ってから「不良品の基準が違う」「納期が遅れても何も請求できない」「自社のロゴを付けた商品が別の販路で売られている」といった問題が起きたとき、頼りになるのは事前に書面で決めた内容です。
この記事では、中国工場とOEM契約を結ぶ前に確認したい項目を、仕様と品質、検査と不良品、納期と支払い、知的財産と秘密保持、準拠法と紛争解決に分けて整理します。法律の細かな解釈ではなく、発注担当者が工場と交渉する前に「何を決めておくべきか」を確認するためのチェックリストとしてお使いください。
ECプランニングは、中国からの仕入れ・OEMから日々のEC運営業務までを一貫して支援する会社です。中国現地の工場やサプライヤーとの直接交渉を代行し、品質基準の共有を含めた継続的な管理を行います。
商品登録やページ制作、広告運用、在庫管理、カスタマーサポートまで、提案にとどまらず自ら手を動かして現場のオペレーションを回す実務力を強みとしています。運営代行やご相談内容の整理など、お気軽にお問い合わせください。
OEM契約書は、取引全体に共通するルールを定める「基本契約」と、商品ごと・発注ごとの条件を定める「個別契約(発注書)」の二層で考えると、漏れなく整理できます。
まずは、なぜ書面での契約が必要なのかと、それぞれの書類に何を書くのかを確認しましょう。
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、委託者のブランドで販売する商品を、他社の工場に製造してもらう取引のことです。工場は委託者の仕様にもとづいて製造し、委託者は完成品を自社商品として販売します。
中国工場との取引では、言語や商習慣の違いから、口頭やチャットでの合意が双方で違う意味に受け取られることがあります。また、問題が起きてから条件を話し合うと、すでに代金を支払った委託者の側が交渉で不利になりがちです。トラブルが起きたときにどう対応するかを、取引を始める前に書面で決めておくことが、OEMの失敗を防ぐ基本です。
基本契約には、品質の考え方、検査と不良品の扱い、知的財産、秘密保持、契約期間と解除、準拠法と紛争解決など、どの商品でも変わらないルールを書きます。個別契約や発注書には、品番、仕様書の版、数量、単価、納期、貿易条件、支払条件など、発注ごとに変わる条件を書きます。
あわせて、基本契約と発注書の内容が食い違ったときにどちらを優先するかも決めておきましょう。継続して取引するうちに実際の条件が契約書から離れていくことがあるため、一部の変更は覚書で、大きな変更は契約の結び直しで対応するのが一般的な考え方です。
中国工場との契約書は、日本語と中国語、または英語と中国語の併記で作ることが多くあります。併記する場合は、内容に食い違いがあったときにどの言語の版を正とするかを条文で決めておきます。
署名する相手が実際に製造する工場なのか、間に入る貿易会社なのかも確認が必要です。営業許可証(営業執照)の会社名と契約書の名義が一致しているか、押印される社印が正式なものかを確かめておくと安心です。工場と貿易会社の見分け方は、中国OEM工場の探し方を解説した記事でも紹介しています。
品質に関する条項で最も大切なのは、「何をもって良品とするか」を仕様書と承認サンプルで具体的に定め、検査の方法と不良品が出たときの対応・費用負担まで契約に書いておくことです。
品質の取り決めがあいまいなままだと、不良かどうかの判断そのものが争いになります。
仕様書には、寸法と許容差、材質、色(色見本の番号など)、重量、印刷やロゴの位置、付属品、パッケージ、表示ラベルなどを、図や写真を添えて具体的に書きます。言葉だけで「高品質」「丁寧に」と書いても、工場との共通の基準にはなりません。
量産前に承認したサンプルは、委託者と工場の双方で同じものを保管し、量産品はこのサンプルと仕様書に合わせることを契約に書いておきます。仕様を変更したときは、版番号を付けて書面で確認し、どの発注からどの版を適用するかを記録しておきましょう。
量産品の検査は、全数検査ではなく抜き取り検査で行うことが多いため、どの基準で何個を抜き取り、何個まで不良を許容するかを決めておきます。抜き取り検査の基準としてはAQLがよく使われます。AQLの考え方と基準の決め方は、別の記事で詳しく解説しています。
あわせて、検査を誰がどこで行うか(工場の自主検査、委託者や第三者検品会社による出荷前検査、日本到着後の受入検査)、検査結果を何日以内に通知するかも定めます。通知の期限を決めておかないと、日本で販売を始めてから見つかった不良について、工場が対応を拒むことがあります。
不良品が見つかった場合に、工場が代替品を作り直すのか、代金を減額するのか、返金するのかを、委託者が選べる形で決めておくと交渉がしやすくなります。再製造品の輸送費、日本側での選別や手直しの費用、不良品の廃棄費用をどちらが負担するかも、あらかじめ書いておきましょう。
検査に合格した後に見つかった不良(隠れた不良)について、工場がいつまで責任を負うかも重要です。日本で販売した商品が事故を起こした場合、国内では輸入者が製造物責任を問われる立場になり得るため、工場との間で責任の分担や、工場側の保険加入について話し合っておくことも検討しましょう。
納期と代金の条項では、納期の起点と遅延したときの扱い、支払の時期と検査の関係、所有権と危険がいつ委託者に移るかを、貿易条件とあわせて決めておくことが基本です。
お金と時間に関する条件は、トラブルが起きたときの損失に直結します。
納期は「発注から何日」なのか「前払金の入金から何日」なのか、起点を明確にします。また、納期を工場の出荷日とするのか、港での船積み日とするのか、日本への到着日とするのかも、貿易条件とそろえて決めておきます。
遅延したときの扱いとして、工場から遅延の見込みを何日前までに連絡するか、一定期間を過ぎた場合に遅延損害金を請求できるか、発注を取り消せるかを定めておきます。春節や国慶節などの長期休暇の前後は生産と物流が止まりやすいため、その期間を見込んだ納期を設定しましょう。
中国工場との取引では、発注時に前払金を支払い、出荷前に残金を支払う形が多く見られます。残金の支払いを出荷前検査の合格後にする、または検査後一定期間内とするなど、支払と検査を結び付けておくと、不良が見つかったときに交渉の余地が残ります。
支払通貨、送金手数料の負担、為替が大きく動いたときの単価の見直し方も決めておきます。原材料の値上がりを理由に、発注後に単価の変更を求められることもあるため、単価の有効期間と、見直しを協議する条件を書いておくと安心です。
完成品の所有権がいつ委託者に移るか、輸送中や保管中に商品が壊れたり失われたりした場合にどちらが損害を負うか(危険負担)を定めます。所有権と危険の移転の時期は、FOBやCIF、DDPなどの貿易条件と矛盾しないように決めることが大切です。貿易条件の違いは、インコタームズを解説した記事で紹介しています。
金型や専用の治具、版などを委託者の費用で作る場合は、その所有権が委託者にあること、契約終了時に引き渡すこと、ほかの顧客の製品に使わないことも契約に書いておきましょう。
知的財産と秘密保持の条項では、ロゴやデザインの使用範囲と横流しの禁止、デザインや技術情報の帰属を定め、紛争解決は中国で実際に効力を持つ方法を選ぶことが重要です。
OEMでは自社のブランドや設計情報を工場に渡すため、模倣や流出への備えは欠かせません。
工場に商標やロゴの使用を認めるのは、委託者が発注した商品に付ける場合に限ることを明記します。発注数を超えて製造すること、委託者の商標を付けた商品や、委託者の仕様で作った商品をほかの販路に販売することは禁止し、違反した場合の措置も定めておきます。
また、中国の商標制度は先願主義で、原則として先に出願した人が優先して登録されます。JETROは、中国で事業を予定しているなら早めに出願することや、取引先による無断の出願(冒認出願)に備えて契約で権利関係を明確にすることを勧めています。商標の出願は契約の交渉と並行して進めましょう。
仕様書、図面、デザインデータ、販売計画などを秘密情報として定義し、目的外の使用や第三者への開示を禁止します。工場がさらに別の工場に製造を任せる再委託については、事前の書面による承諾を条件にしておくと、知らない工場に情報が渡るのを防げます。
工場と一緒に改良した設計や、工場が委託者のために作ったデザインの権利がどちらに帰属するかも決めておきます。秘密保持契約(NDA)は見積もり依頼の段階で先に結び、OEM契約の締結時に内容を引き継ぐ流れが一般的です。
準拠法とは、契約の解釈に使う国の法律のことです。国をまたぐ契約では原則として当事者が選べますが、中国企業は中国法を求めることが多く、交渉の論点になります。
紛争解決の方法については、日本と中国の間では裁判の判決を互いに承認していないため、日本の裁判所で勝訴しても中国で強制執行できないとされています。そのため、香港やシンガポール、日本の仲裁機関などによる仲裁を指定する方法が、実務で検討されることが多くあります。どの機関と場所を選ぶかで費用や手続きが変わるため、最終的な条文は、中国取引に詳しい弁護士の確認を受けてください。
中国工場とのOEM契約では、仕様と良品の定義、検査と不良品の扱い、納期と支払、所有権と危険負担、知的財産と秘密保持、準拠法と紛争解決の6つを、基本契約と発注書に分けて定めておくことが基本です。条件は一度に完璧にする必要はありませんが、問題が起きたときの扱いを先に決めておくほど、量産後の交渉は楽になります。
契約の内容は、工場の規模や取引の金額によって受け入れられる範囲が変わります。国内の製造委託では中小受託取引適正化法(2026年1月に下請法から改正)が関わることもあるため、法令の最新情報は所管官庁で確認し、契約書の最終確認は専門家に依頼しましょう。ECプランニングでは、中国現地工場との直接交渉を通じて、仕様のすり合わせから条件の交渉、量産の立ち上げまでを一貫して支援しています。
A.法律上は口頭やチャットでも契約は成立しますが、品質の基準や不良品の扱い、知的財産の取り決めを証明できないため、書面の契約書を作ることをおすすめします。少なくとも仕様書、承認サンプル、発注書の条件は書面で残しておきましょう。
A.日本語だけでも作れますが、工場側が内容を正しく理解できるよう、中国語や英語との併記にすることが多くあります。併記する場合は、食い違いがあったときにどの言語の版を優先するかを条文で決めておきます。
A.契約で定めなければ、デザインや改良した設計、金型の権利の帰属があいまいになり、争いの原因になります。委託者の費用で作った金型や、委託者のために作った成果物の帰属は、契約書に明記しておきましょう。
A.契約に遅延時の連絡義務や遅延損害金、発注の取消しの定めがあれば、それに沿って請求や取消しができます。定めがない場合は交渉に頼ることになるため、納期の起点と遅延時の扱いを事前に決めておくことが大切です。
A.日本の裁判所で判決を得ても、日中間では判決の相互承認が行われていないため、中国で強制執行できないとされています。紛争解決の方法としては仲裁を指定することが多く、具体的な条文は専門家に相談してください。