
OEM契約書で確認したい項目|中国工場と結ぶ前に決める知財・品質・納期
中国工場とOEM契約を結ぶ前に確認したい項目を解説します。仕様と品質基準、検査と不良品の扱い、納期と遅延、知的財産と商標、秘密保持、準拠法と紛争解決まで、契約書…
秘密を守るだけでは足りない。中国工場に図面を渡す前に結ぶ契約の中身
見積もりを取るために中国の工場へ図面を送ったら、数か月後に似た商品が別の店で売られていた。OEMで商品をつくる企業にとって、これは決して遠い話ではありません。ジェトロの資料(2008年)にも、委託加工先の関係者がひそかに模倣品を製造・販売していたケースが多く報告されていると書かれています。
図面やサンプルを渡す前に、どんな契約を、どの言語で、どの国の法律で結ぶかを決められるようにまとめました。ジェトロの知的財産Q&Aと、中国の契約実務に詳しい海外の法律事務所・専門家の解説を参照しています。
ECプランニングは、中国からの仕入れ・OEMから日々のEC運営業務までを一貫して支援する会社です。中国現地の工場やサプライヤーとの直接交渉を代行し、品質基準の共有を含めた継続的な管理を行います。
商品登録やページ制作、広告運用、在庫管理、カスタマーサポートまで、提案にとどまらず自ら手を動かして現場のオペレーションを回す実務力を強みとしています。運営代行やご相談内容の整理など、お気軽にお問い合わせください。
NDAは「秘密を外に漏らさない」約束が中心で、工場自身が図面を使うことや、発注者を飛ばして取引することを止めるには、NNN契約の形で義務を広げる必要があります。
NNN契約とは、Non-Disclosure(非開示)、Non-Use(目的外使用の禁止)、Non-Circumvention(迂回取引の禁止)の頭文字をとった契約のことです。米国の知財メディアに寄稿した中国の知財弁護士は、秘密の漏えいを防ぐことに絞ったNDAは、中国のOEM取引には十分でないと述べています。
工場で起きやすい違反として、同じ解説は、競合他社の商品を受託生産すること、生産した商品を自社で売ること、受け取った技術を使って似た商品を設計することを挙げています。どれも「第三者に漏らした」わけではないため、NDAの条文だけでは責めにくい行為です。
たとえば、OEMで発注した収納ケースの金型と図面を使い、工場が色だけ変えた商品を自社のネット店舗で売り始めたとします。工場は情報を誰にも渡していないため、NDAの「第三者への開示の禁止」には当たりません。目的外使用の禁止があれば、契約違反として責任を問う根拠になります。
契約は、見積もり依頼で図面や仕様書を送る前に結びます。工場探しの段階では、複数の工場に同じ資料を送ることも多いからです。
まだ形になっていないアイデアを工場と一緒に設計する場合は、NNN契約に加えて、開発の成果を誰のものにするかを決める製品開発契約や製造委託契約を検討するよう、先の解説は勧めています。OEM契約全体の項目は「OEM契約書で確認したい項目」の記事で整理しています。
NNN契約の中身で確認したいのは、対象となる情報、3つの義務の範囲、有効期間、違約金、準拠法と言語、紛争解決の6つです。
図面、仕様書、サンプル、パッケージのデザイン、取引条件、顧客や販売先の情報など、守りたい情報を具体的に書きます。あわせて、送るファイルやメールに「秘密情報」と表示し、送った日付が分かる形で記録を残します。
表示と記録は地味な作業です。それでも、あとで「どの情報を渡したか」を争うときの証拠になります。
取引をやめた後に図面を使われては意味がありません。先の知財弁護士は、取引関係の終了から2〜3年後に効力が切れるように定めることが多いと説明しています。ジェトロの資料も、契約期間が終わった後の秘密保持義務を定めるべきだとしています。
期間の書き方にも注意が要ります。「本契約の有効期間中」とだけ書くと、取引が終わった時点で義務も消えると読めてしまいます。「取引終了後も〇年間」のように、終わった後の期間を数字で書きます。短い文でも、契約の効き目を左右します。
ジェトロの資料は、違約金の額を決めておけば、義務違反の事実を立証するだけで、損害額を立証せずに請求できると説明しています。米国の法律事務所の解説も、違反行為1回ごとに具体的な金額を定めることを勧め、金額が決まっていれば中国の裁判所で判決前の資産差し押さえを求める根拠になるとしています。
ただし、実際の損害とかけ離れた金額は、裁判所が調整することがあります。取引額や想定される損失から説明できる金額にしておくのが現実的です。
工場が「グループ会社に見せただけで、自社は使っていない」と主張するケースがあると、米国の法律事務所は注意を促しています。契約では、グループ会社への開示も禁止し、グループ会社が違反した場合も工場が責任を負うと書きます。
部品や加工の一部を外注先に出す工場も多くあります。ジェトロの資料のチェックリストには、受託者に従業員や外注先と秘密保持契約を結ばせる義務を定めることが含まれています。
見積もりの段階で「原価を出すために外注先へ図面を見せる必要がある」と言われることもあります。その場合は、見せる外注先の名前を事前に知らせてもらい、同じ義務を負わせたうえで開示を認める、という順番で話を進めます。
契約を結んでも、中国で裁判や仲裁を起こせなければ効き目は薄いため、準拠法・言語・紛争解決の3点は工場の所在地を前提に決めます。
中国の契約実務に詳しい米国の法律事務所は、中国法を準拠法とし、中国語を正文にして、相手の工場を管轄する中国の裁判所を専属管轄とする形を勧めています。英語を正文にすることも法律上は認められるものの、多くの中国の裁判所は外国語の書類を扱いたがらない、というのが理由です。
日本語と中国語の2つの言語で契約書をつくる場合は、どちらを優先するかを明記します。ジェトロの資料は、中国語では「5以上」が5を含まない意味になるため、「5以上(5を含む)」のように書くよう例を挙げています。数字の範囲や単位は、両方の言語で一つずつ読み合わせます。
ジェトロの資料(2008年)は、日本の裁判所の判決は中国で執行できない一方、仲裁判断は日中ともにニューヨーク条約の加盟国であるため執行できると整理し、中国国際経済貿易仲裁委員会や日本商事仲裁協会を挙げています。米国の法律事務所は、外国の仲裁判断は中国で執行できるとしつつ、実際に執行されるまでの道のりは険しいと述べています。
どちらを選ぶかは、取引額、相手の資産がどこにあるか、手続きにかけられる費用で変わります。決める前に、中国の法律に詳しい専門家に確認してください。
仲裁を選ぶ場合は、仲裁機関の名前、仲裁を行う場所、使う言語まで条文に書きます。機関名があいまいな条項は、いざ申し立てるときに争いの種になります。
契約は相手の義務を定めるだけで、第三者の模倣までは止められません。ジェトロの知的財産Q&Aは、特許や実用新案のない技術は、真似されたことだけを理由に差し止めることはできないとしています。デザインは意匠権の取得、ブランドは早めの商標出願とあわせて進めます。
社内の管理も欠かせません。ジェトロのQ&Aは、秘密保持義務を負わせずに第三者へ開示した情報は、営業秘密として保護されなくなると注意しています。図面を送る担当者を決め、契約を結んだ相手にだけ送る運用にします。
最初の一歩として、これまで中国の工場に送った図面や仕様書を一覧にし、送った相手ごとに秘密保持の約束があるかを確かめてみてください。契約のないまま資料を渡している工場が見つかれば、次の発注の前にNNN契約を結ぶ交渉から始められます。
ECプランニングは、中国OEM製造支援と中国工場交渉支援を通じて、工場探しから契約条件のすり合わせ、試作、量産まで一貫して支援しています。中国現地工場との直接交渉にも対応します。契約書の法的な確認は弁護士など専門家にご依頼いただき、工場との条件交渉や実務の段取りはご相談ください。中国の法律は改正されることがあるため、最新の内容は専門家やジェトロなどの公的機関で確認してください。
A.NDAは秘密の漏えいを防ぐ約束が中心で、工場自身が図面を使って似た商品をつくることや、発注者を飛ばして取引することを防ぐには足りないと専門家は指摘しています。目的外使用と迂回取引の禁止を含むNNN契約の形にするのが一般的な考え方です。
A.法律上は英語を正文にすることもできますが、中国の裁判所は外国語の書類を扱いにくいため、中国語を正文にする方法が勧められています。日本語版も作る場合は、どちらを優先するかを契約書に明記してください。
A.決まった相場はなく、取引額や想定される損失から説明できる金額にするのが現実的です。実際の損害とかけ離れた金額は裁判所が調整することがあるため、金額は専門家と相談して決めてください。
A.契約で縛れるのは契約の相手だけで、第三者の模倣までは止められません。意匠権や商標権を取得し、図面を送る相手と担当者を社内で限定する管理とあわせて進めることで、模倣のリスクを下げられます。